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学習塾の経営は、データ収集と共にある。
これから学習塾を開業しようという人で “3年経営したらサラリーマンに戻る!” などと短期間で塾をたたむつもりの人はいないですよね。
ほとんどの人がしばらくあるいは生涯開業した学習塾を経営するということになると思います。
つまり長期間経営を安定させていかねばならないのです。
その場合、様々なデータを収集していくこと大切になります。全く判断材料がない状態よりも、例年の傾向が大まかにでもわかっている方が、合理的に結論を出せて正確さも増してきます。
例え個人塾とはいえど、武器になるものは確保しておいて損はありません。
というか、繁盛している学習塾は必ずやっていることです。
とりあえず私の経験から、まとめると役に立つデータを大きく分けて3つ書いておきます。基本的なことですが、必ず集めておきたいデータです。
テストの範囲や過去問、そのテストの平均点。
生徒達の点数と順位の推移、成績評定と卒業後の進学先。
広告を入れた日、問いあわせがあった日などの日付等。
この3つです。
テストの範囲や過去問、そのテストの平均点。
定期テストの場合、その2週間か3週間前にテスト範囲が配られます。教科書の何ページから何ページまでの範囲で出題するという情報です。
学習塾の役目はテストの点数と成績をあげることです。テストの出題範囲ではない問題を授業で解かせても意味がありません。そのため、テスト範囲は普段の指導でも必須のものとなります。
また、テスト範囲を集めておけば翌年の同じ時期のテストがどの範囲まで出題されるのか容易に想定できるのです。
事前の予習をどこまで進めておけばいいかあたりがつく。テスト範囲が全員に配られる前におおよその範囲がわかるのは大きなアドバンテージとなりますね。
実際に出題されたテストの過去問も重要な情報になります。生徒達に協力してもらい、テストの問題を持ってきてもらいましょう。ちなみにテストの答案には名前と点数が書いてあるので、個人情報の扱いには気をつけてください。
理想的なのは、その過去問に問題作成者の先生の名前と平均点を書いておくことです。
学校の定期テストの多くは学校の先生が作成します。もちろん毎年同じ問題は出ないにしても、テストを作成する人間が同じであれば問題の配置や解答用紙などの雰囲気はほとんど変わりません。クセみたいのがあるんでしょうね。
課題から同じ問題を出す先生、数字だけ変えて出す先生、配布したプリントの資料を必ず出す先生、ひとつは入試の過去問を出す先生…結構傾向がありますよ。
テスト本番を前にその雰囲気をつかむことができる、これは大きなメリットです。大学入試の経験者ならわかりますよね。中学高校の定期テストだってだって同じこと。
採点して平均点と比べれば、生徒達の自信にもつながります。
学校の先生は生徒達といっしょに学年が持ち上がる先生が多いため、過去問収集の威力が出てくるのは数年後からです。
ただし“あの塾はテストの過去問ばかり解かせている”といった評判が立たないよう、過去問の使用頻度には気をつけましょう。
いくら成績をあげるためとはいえ、過去問に頼り切りなのはイメージがよろしくないのです。周りから見たらね。
ちなみに、紙ベースだと数年すると尋常じゃない量になってくる(実体験)ため、スキャナーやエクセルなどを駆使して上手にさばいてください。
生徒達の点数と順位の推移、成績評定と卒業後の進学先。
生徒達のテストの点数と順位の推移、成績評定と進学先はまとめて記録しておきましょう。現在も今後も進路指導の際の資料として役に立ちます。テストの点数と順位は、目標点などといっしょに生徒本人に記入してもらうと手間が省けます。
↑こんな感じのレーダーチャートも用意してあげると、中学生(特に男子)はうっきうきで記入します。
特にテスト結果の記録をとるときは “これまでの推移が一目でわかるよう一枚紙などにまとめて記録する” というのが重要になります。
学力の伸びを生徒達本人や保護者に実感してもらうときにも、これらの記録が重要になります。
学習塾へ通えば、学力は少しずつ伸びていきます。ただ、常に成績があがり続けるわけではありません。三歩進んで二歩下がるときもあります。
しかし成績が下がってしまったときは、あがったとき以上に敏感に保護者は反応します。
そこで記録をつけていれば…
※単純な点数だと平均点や難易度もあり比較できないため、便宜上偏差値のグラフにしてあります。派手な上がり方ですけど、例えですからさ。
こんなケースの場合、推移を見せながら説明ができるのです。
保護者が言ってこなかったとしても、生徒を励ます資料になります。
より具体的な激励することができるのです。
生徒も保護者も今よりも学力を伸ばしたくて学習塾へ来る。それは絶対です。
今後のデータとしてのみではなく、そのことを説明するための資料としても学力の推移がわかる記録は積極的にとっていきましょう。
広告を入れた日、問いあわせがあった日などの日付等。
広告を入れた日、問いあわせがあった日は主に集客面で重要になるデータです。
手帳でもインターネットの無料のものでもいいので、記入できるカレンダーを用意しましょう。できる人はエクセルだと楽ですよ。
新聞折込なりポスティングなり、広告をいつどの範囲に入れて、○○学校の○年生からいつ問いあわせがきたのか、カレンダーの日付に記入していくのです。
これ、最初の2~3年は本当のデータ収集になります。
しかし何年分もこれが積み重なっていくと
“問いあわせがどのタイミングでくるのか”
“どの地域からの問いあわせが多いのか”
がわかってくるのです。
地域によって必ず片寄りが見えてきますよ。小中学生の子育て世代は、あまり引っ越ししませんからね。
そうすると、広告を入れる効果的な時期が見えてきます。
地域によって問いあわせが増えるタイミングはまちまちです。テスト前なのか後なのか、季節休みの前なのか後なのか、新学年の入塾検討が年明けなのか新学期がはじまってからなのか、あるいはそれ以外のタイミングなのか。
また一部の地域からの問いあわせが多いとなれば、教育熱心な家庭が多い地域がわかります。あるいは口コミがその当たりで広まっているのかも知れませんね。
学習塾経営の経費の中では、広告費が相当な割合を占めます。
デタラメに広告をまいていると、あっという間に資金が減っていきます。なので自分の学習塾の周りの地域性を把握しておきましょう。
経営するなら判断基準は多い方がいい。
この3つ以外にも、経営している中で記録しておいた方がいいと思うデータがあったらばどんどん記録をしていきましょう。
スキャナーで取り込むなどしてデータベース化しておけば、場所もとらず検索も簡単です。便利な世の中ですわ。
その場合は外付けハードディスクやサーバーにバックアップをとっておいてくださいね(自戒)。
自分で学習塾を経営する場合は“全ての判断を自分で下す”ことになります。他の人は何も決めてくれません。
勘や感覚だけでは的確な判断ができないときもあります。具体的な判断材料は多い方がよいに決まっていますね。
また、いきなり漠然とした不安に襲われるときもあるんです。なんせ独りですから。
例年の動きがわかっていれば精神の安定に役立ちます。結構これに救われることもある(笑)。
データは蓄積されて初めて威力を発揮するもの。なので、思ったらその時から記録を取っていきましょう。早いほうがいいです。
意外なところで必ず役に立ちますよ。