
月謝は周辺より高めに。
自分で学習塾を経営するということは、あなたの給料にあたる月謝、それを自分で決めるのです。
つまり “自分の仕事にいくらの値をつけるか” という話になります。
では、これから学習塾を開業するときは月謝をどのように決めればよいのか。
一つの基準は “周辺の塾より少し高め” にすることです。
少なくとも、あまりにも安くしてはいけません。自分で自分の首を絞めることになります。
教室に入る生徒数が限られている上、生徒集めが永遠のテーマとなる学習塾経営では、薄利多売は禁物。多売が難しいのです。薄利はいくらでもできますけどね。ははっ。
なぜ安くてはだめなのか。具体例で考えてみる。
ちょっと考えてみましょう。安い月謝と高い月謝では、同じ収入にするには安い月謝の方が生徒数が必要になりますよね。
例えば、
「月謝10000円で80人生徒がいるA塾」
「月謝20000円で40人生徒がいるB塾」
売上は、どちらも同じ80万円ですね。これどっちの方がいいですか?
A塾の方が生徒がたくさんいて良さそうに見えますが…。
学習塾が授業をできる時間帯は子どもが学校から帰ってきてから夜まで。結構限られています。そうなると、B塾の方が生徒一人に多く時間を割けますよね?
つまり、B塾の方が生徒と保護者の満足度が高くなるのです。値段が高ければ、人はそれ相応の期待をします。その期待に応えればお客は満足し、口コミにつながります。
さらにこの場合、生徒数が少ないB塾の方が経営的にも安定します。
どういうことか。
生徒はいつまでも学習塾に通ってはくれません。20歳30歳になって学習塾に通われても困ります。必ずどの生徒も卒業するときがくるのです。寂しいですけどね。成長とはそういうもの。
その卒業した生徒の分、
「A塾は新規募集をして生徒20人生徒を入塾させる」、
「B塾は新規募集をして生徒10人生徒を入塾させる」、
割合で考えればこうなります。明らかに、B塾の方が容易ですよね。
やってみるとわかりますが、労力が倍以上違います。
確かに少し前までは、“チラシやホームページなどで周辺塾の月謝を調べ、それよりも若干安く設定する” というのが定石でした。
そうすることで、学習塾を検討している保護者が周辺の塾と比べたとき、少し安い自分の塾が優位に立てるという考えです。
まぁはっきりいって、生徒集めの難しさをそのまま表してるのがこの考え方だったのです。
しかし、
「周りより少し安めで、月謝を18000円にした」
「そしたらその後近くに月謝が16000円の塾ができた」
この時点でこちらの優位性は消えます。安さを理由にあなたの塾へ来た生徒は、新しくできたもっと安い塾へ移るでしょう。
では、こちらは14000円にします?そしたら向こうは12000円?共倒れになるだけです(笑)。
真面目な話、どうしようもなくなりますね。
そもそも我々学習塾の側が “安くすれば生徒は来るだろう、だから月謝を安くする” という考えを持つのは安直過ぎなのです。
今の月謝で生徒が来なければもっと値下げするんですか?もはや先細りの未来しか見えません。
そして家庭側も、“月謝が安い=学習塾へ” というわけではないのです。
普通の家庭は、必要性を感じるから学習塾へ入塾させるのです。そのことを忘れてはいけません。
なので我々の側は月謝を安くすることではなく、
どのような価値を提供すれば生徒保護者の需要に応えられるかを考えるべきなのです。
あなたが懸命に考えた需要に応じた価値、それは決してそう安くはないはずです。
管理人りきちが開業したときの月謝。
お恥ずかしながら、正直に言いますと私は開業当初、
…まぁこんなもんかな。
とかよく考えもせず月謝を決めていました。当時20代半ば。初々しい。
結果その月謝は安すぎたのです。
それもそのはず。もらってた給料が初任給レベルの20代半ばの若造の金銭感覚で決めたのですから。
なんて考えていたら、子育て歴10年越えのご家庭にしてみたら安すぎる金額でした。
開業当初の私の教室はこんな感じ。
1学年のマックスが5人。これで週2~3回の通塾で、中学生の月謝が15000円でした。小学生は7000円。そして教材費諸経費なし。人数比で考えればかなり安いです。
実家の空き部屋でよかったです。家賃がかかってたら今の私はないでしょう。
とはいえ当初はそんな気もなく、
と素直に喜んでました。まぁ、自分で塾できてるだけで楽しかったですし。
そんなときに、会社を経営するマダムの娘さんが入塾してきました。BMWで送り迎えのとても真面目ないい子でした。なんでまたこんなできたばかりの塾に?いや、さすが会社経営者。先見の明がありますね!
しばらくして、
その発想はなかった。その後も色々御指南いただきました。もうどっちが先生かわかったもんじゃありません(笑)。
その人が価値を認めれば、お金を出すのは惜しくはない。
今まで安ければ安い方がいいと思っていた私にとって、もっとお金出していいという価値観に触れたのは初めてでした。
そして計算してみたら…、
小学生が多少いるとはいえ、1学年定員5人で一人15000円ならそらそうなりますわ。な~んで最初に試算しとかなかったんでしょうねぇ。
その後、指導形態の変更に合わせて1回、消費税が8%になったときに1回、現在までで合計で2回値上げしました。
どちらの値上げのときも一人二人の退塾者は出てしまいましたが、その他特にクレームが出ることもなく(たぶん)、
などと思いながら、さらなる価値を提供すべく日々精進しています。
値上げのときに退塾してしまった人には申し訳ないですが、ほとんどの人は値上げしてもそのまま通い続けてくれたのです。
別に安さで選ばれていたわけではなかったと実感しました。
払っている金額に対して期待をして、その期待にこちらが応えることができれば、保護者は子どものためにお金を払ったことにさえ満足するのです。
では、月謝どうやって決めようか。
収入はモチベーションに関わります。そりゃ人間だもの、そうですよ。
なので、周辺の学習塾の月謝を調べてあなたの学習塾の月謝を設定する他に、今の教室のキャパシティであなたがいくら稼ぎたいのかという視点も忘れてはいけません。
例えば、満員で生徒が60人入る教室で開業するとしましょう。公立小中学校対象。稼ぎ頭は中学生です。
軌道に乗って常に満員の素晴らしい学習塾になったとします。しかし、卒業して集客するラグを考えると、年間では0.9掛けくらいで考えた方が現実的。
60×0.9=54人
おおよそ常時54人の生徒がいることになります。
例えば、各種税金も含めて1000万円を手元に残したいとしたら、1000万円+経費分を売り上げる必要がありますね。
経費が300万円だとしたら、売上で1300万円。
54人から年額で1300万円を集金するわけです。
1300万÷54=約24万
一人年間で24万円です。つまり1ヶ月20000円前後。これが中学生の月謝の基準になります。メイン収入。
しかし、小学生もいるのであれば時間数からして同じ月謝にはしませんよね。おおよそ13000円くらいでしょうか。-7000円ね。
54人のうち20人が小学生だとして、
20×(-7000)=-14万円
この-14万円を残りの34人の中学生でペイするとすると、
14万÷34=約4000円。
結果中学生1人の月謝は、
20000(基準)+4000(小学生差額)=約24000円
こんな感じになります。あとは受験生を多少高くして、中学1年2年を下げるとかね。そして周辺と比べてみればいい。
自分がいくら稼ぎたいのかを考えずに月謝を決めると、初期の私のようになります(笑)。学習塾やりたくてやれているとしても、がんばった対価は欲しいです。
私は今まで月謝を下げたことはありませんが、下げる方は容易に出来ると思います。値下げはみんな受け入れやすいよね。
しかし、一度決めた月謝を上げるのは大変です。心臓ばっくばくですよ。
現状に満足していなければ一斉に退塾してしまうかもしれません。値上げするにはその覚悟を持ってしなければならないのです。
そのためにも、初期設定で多少高めに設定することをおすすめします。
これじゃ高い?ならば、それだけの価値を提供する努力をすればいいのです。
高いと感じるのはまだまだ自分の能力が足りないと思っている証拠。どうしたらいいか考えるのは自分の成長にもつながります。そうして素晴らしい学習塾ができあがっていくのではないでしょうか。
管理人りきち的まとめ。
こう言うと怒られるかもしれませんが、ご容赦ください。
私の学習塾の開業初期、月謝が安かった時期は、“ちょっと私とは常識が異なるなぁ” という家庭も一定数いました。
もちろん私の常識が全てではありません。向こうには向こうの言い分があったのだと思います。
しかし、欠席の連絡がなかったり、月謝が遅れてると思ったら月謝袋をなくしたと言われたり、急に来なくなってやっと電話つながったと思ったら先月末で辞めると言い出したり…。
私が連絡にうるさすぎるのでしょうか。でもいつもと状況が違うなら、言ってくれないとこっちもわからないから動きがとれなんだ。
結局、そういう子は早い段階で辞めていきます。こちらとしてはありがたいですけど。とりあえず入塾してくれたとはいえ、これはあなたの塾が選ばれたというよりは、もはや白羽の矢が立ったというべきでしょう。
“安いから学習塾へいくという家庭” は “塾で勉強を指導しようというあなた” とは価値観が合わない可能性が高いのです。
学習塾へ安さを求める場合のほとんどが、その家庭に安さを求めざるを得ない理由があるということ。季節講習で普段より月謝が高くなるときは受講しないなど、こちらが頭を抱えてしまうパターンも考えられます。
で、結局退塾。その後退塾したという噂が広まってはたまったもんじゃない。あなたがその場にいれば弁解もできますが、人の口に戸は立てられないのです。
確かに、月謝を安くすれば最初は生徒が集まりやすいかもしれません。それは認めます。
しかし、それ相応のリスクを負うことになります。はっきりいって、常識の異なる人を相手にするのは結構ストレスです(怒)。そのことに追われて他の時間が圧迫されてしまう。
そして例えどんな子であっても、退塾したとなれば通塾している生徒は不安になってしまいます。
安い月謝は、長い目で見れば悪手なのです。
飲食店や販売店などとは異なり、学習塾は行ってお金を払って終わりというものではありません。
毎月費用を払い、継続してサービスを受けるという場所です。早い話が会員制のビジネスみたいなもの。
そして保護者からすれば、可愛い自分の子どもが何年もその場所に通い続けることになるのです。多くの家庭であれば、安さが決め手にはならないでしょう。
学習塾は入塾してからでないと良さがわからないことも多いので、入塾前に与える印象も大切。安い月謝の場合、その値段を見た時点で値踏みされてしまいます。多くの人は、安いのには何か理由があるのではと勘ぐって敬遠します。
例えば安い月謝にして入塾後に良さがわかったとしましょう。きっと家庭ではこんな話が出ます。
簡単に想像できますね。これどうとらえますか?
この感想こそ値踏みの最たるもの。
一見いい評判に見えますが、これ裏を返せば軽く見られていたということに他ならないのです。
この口コミが広まってしまったら、“いい塾” ではなく “値段の割にいい塾” になってしまいます。
私は100均で結構買い物します。これ100円なのに便利でいいなぁって思います。でも例えばそれが300円になったら…買うかどうか迷いますね。
反対に高めの月謝であれば、当然保護者側もそれ相応の期待をします。十分な満足度を与え、保護者の期待に応えることができれば、口コミに直結しますよ。
こういった評判の方が理想的ですね。
“少しくらい高くても、子どもにはいいサービスを受けさせたい”
そういった家庭をターゲットにしていきたいのです。
たぶんそういう家庭の方が、我々と価値観が近いと思います。
もちろんそれだけのサービス(授業)を提供する前提ですので、日々の研磨をかかさないでください。
指導する我々も人間ですから、高いお金をいただいている方がモチベーションもあがり、いい仕事ができますよ。
月謝が多少高くても、その価値にしっかり保護者が納得すれば問いあわせは十分にくるのです。
安さに逃げるのではなく、自分の価値を高めていく。個人事業では商品はあなただけなのです。そのことを忘れないでくださいね。