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個別指導塾とはなんぞや。
個別指導とは一般的に講師1人に対して生徒が1人か2人です。そして何より、マンツーマンで説明をするのが特徴的でしょう。
集団指導や少人数指導でも授業中に生徒の質問に答えることがあると思います。それを至近距離で、その生徒のためだけに行うのが個別指導になります。
↑こんな感じにパーティションで区切ってある長机の真ん中に講師が座り、その両脇に生徒が座るタイプの塾や、
↑生徒が問題を解いている中を講師が歩いて巡回するスタイルで個別指導と銘打っている学習塾もあります。説明するときは個別なので、個別指導っちゃぁ個別指導なのでしょうか。
ここ近年で急に数を増やし、大きい塾も新しく個別指導クラスを作ったりしています。
個別指導塾は一人一人それぞれに合わせた対応をします。非常に美しい言葉ですね。この言葉が響く保護者は確かに一定数います。
生徒と保護者の側から見れば、自分たちのニーズに細やかに対応してくれる塾に見えるのです。
しかし、塾の側がそのニーズにしっかり応えられるかどうか。
無論、個別指導では直接あなたが授業できる生徒数は限られています。その他の生徒はあなた以外の講師が指導することになります。
アルバイトの講師がニーズをしっかり満たせると思いますか?いきなり正社員なんて雇う余裕はないですよ?
仮にニーズを満たせる講師が見つかっても、その講師がいつまでも働いてくれるとは限りません。そんな優秀な人材を安定して集められると思いますか?
講師によって指導力に差がある場合、同じ金額なのに不公平だと保護者は言ってきます。どうしましょ?
結論から言えば、新しく開業するのであれば個別指導塾はおすすめしません。
あ、他に講師を雇わず、あなた1人の個別指導塾で十分な利益が出るほどの授業料設定をするのであれば話は別ですよ。
ただし保護者がイメージする個別指導は、講師:生徒=1:1か、あるいは1:2です。それ以上の人数だと、
と思われてバッドエンディングです。
1:2で自分一人で指導する場合、一日にあなたが指導できるのは数人。生徒一人が週2~3回きたとすれば、利益出すには相当強気の授業料設定をせざるを得ませんよね。
例えば月謝が10万円。まぁそれでも絶対に成績があがるというなら、入塾する家庭はいますよ。素晴らしい差別化になります。
しかし現実的なことを言えば、個別指導塾であればアルバイトで講師を雇うこと前提になるでしょう。
ちなみに、個別指導塾は生徒の成績があがりにくいです。詳細はデメリットで後述。
個別指導塾のメリットは?
授業料を高めに設定できる
個別指導塾最大のメリットは授業料を高めに設定できる点です。その分、生徒が少ない早い段階でも入ってくるお金は多いです。
大手の個別指導塾のチラシやホームページを見ると、結構いい値段を設定していますよね。
マーケティングをしっかりしている大手塾が強気な授業料設定をしているということは、授業料が高くとも個別指導塾へ通わせる方がよいと思う保護者が多いことを意味しています。
反対に個別指導塾であまりにも授業料が安いと、何かあるのかと勘ぐられます。低賃金で大学生をこき使っているとかね。価値を提供できるのなら、多少授業料とってもいいのです。
まぁ…人件費がかかるので、授業料を高くしないとやっていけないんですけども。
きめ細やかな対応が可能
きめ細やかな対応。素晴らしい。
個別指導塾は保護者からしてみれば、自分の子を個別に面倒を見てもらえることになります。
実際学習塾の側からしても、生徒それぞれに個別に対応ができるので様々な対応が可能なのです。
生徒達との距離も近く性格や特性も把握しやすいです。学力的にも、あらゆるレベルの子に対応ができるのは大きいですね。こっちは復習をやったり、あっちは応用問題を解いてたりね。
はい、もちろんそれだけ準備は大変です。
もちろんあなたは張り切って準備をしますよね。自分の学習塾だもの。
それをアルバイトの講師が同じくらい準備してくれるのか。
きめ細やかな対応をしている風に見せても、成果が出せないと生徒と保護者は離れていきます。
講師の意識をどれだけ高められるかが鍵を握ります。雇うのであれば、その分時給をあげてあげましょう。
時間割の融通が利きやすい
これは純粋なメリットです。
個別指導塾は生徒それぞれに個別の対応になるため、その生徒に合った時間割を組めます。
生徒側にしてみれば、他の習い事や部活動との調整が利くとも言えます。
「ピアノが終わったあと、そのまま塾へ行きたい。」
「部活がない曜日だから、早い時間に授業を入れたい。」
「送り迎えが大変だから、兄弟姉妹で同じ時間帯がいい。」
なんでもござれです。
その点、学習塾を探している家庭の選択肢に入りやすいのです。シンプルなようで、かなり大きいメリットですよ。
個別指導塾のデメリットは?
一人ではすぐ限界、人件費と人材確保が課題
一人で指導できる人数が少ない以上、自分だけではすぐに限界がきます。
そうすると、講師を雇わねばならない。
しかし、その講師一人が指導できる生徒数も少ないです。つまり、生徒の数に応じて講師も人数が必要になります。生徒が増えても、講師を雇った分だけ、月々の人件費がふくらんでいきます。
しかし、講師が足りなければ多くの生徒は抱えることはできません。人が足りないからといってアルバイトを募集したとしても、そうそう都合良く問いあわせはきません。
大学生が中心の講師陣の場合は、卒業や就職でまとまって退職することも考えられます。それならまだ前もってわかるのでいいのですが、バックレなどの不届き者も出てくるかもしれません。
次の講師が決まらないときや急に講師が変更になったときに、生徒達にどのように対応するかも考えておく必要があります。
授業料が高い分、求められるハードルも高い
支払う金額が高額であれば、当然こちら側に求められるハードルも高くなります。
高いお金出したレストランでご飯がまずかった日には、文句のひとつでも言いたくなりますね。
高い授業料を払っているのに塾に通っている効果がないと思われてしまっては、退塾されても仕方ありません。
ところが…
成績があがらない
個別指導塾に入塾してくる子は、基本的に学校の授業について行けない子達です。成績がとんでもなくボロボロこちらの想像をはるかに超えた学力レベルの子が来るときも普通です。
そんな状態の子が、ちょっとやそっとでテストの成績が伸びるわけありません。こちらが復習から必死にに指導しても、その間に学校の授業はさらに進んでいきます。それこそ年単位の時間がかかって、点数につながるかどうかでしょう。
まぁ親の方がそんなに待ってくれるわけないですけどね。月謝高いし。
と言ってくる家庭もいます。成績が飛び抜けて低く、親も諦観気味の家庭。他の塾で断られて来ることもしばしば。ですが口ではこう言ってても、月謝を払っている以上はもちろん多少の期待はしてきます…。
ここまでは生徒が要因で成績があがらないという話です。大げさではなく、実際そうなんです。
しかし、万一そうでなくても、成績があがりにくい最大の原因が個別指導塾にはある。
一言で言うと“過保護”です。
大学生のアルバイトや、教育系を目指し始めたばかりの人にありがちな思い込み。それは、
「生徒の隣で一つ一つ丁寧に説明していれば、成績があがっていく。だってマンツーマンなら絶対理解させられるでしょ。」
というもの。お恥ずかしい話、私も大学生で塾講師のアルバイトを始めたときそう思っていました。
学習塾経験者ならわかりますよね。そんなことはありえません。
個別指導塾の場合、多くは講師が生徒につきっきりになります。
講師が問題を解説し、生徒が質問してきたらそれに答える。文言だけみれば非常に理想的に思えます。
しかし、これは生徒の自主性を奪っていることに他なりません。
“マンツーマン”とか“生徒の側で”というより、“過保護”や”おんぶにだっこ”やといった方が適切でしょう。
つきっきりで教えて理解させたところで、生徒自身が考えなければ絶対に成績があがりません。
生徒の成績をあげるためには、ある程度の突き放しは必要不可欠なのです。
手取り足取り教えていると、少しでもわからないところがあったら反射的に質問してくるようになります。一切考えもせずね。
授業形式の指導の場合、その場ですぐ質問出来る子は多くありません。なので、わからないところが出てきたら多少なり自分で考え、授業後に質問にいくでしょう。
しかし、隣に聞けば教えてくれる講師がいる個別指導塾の場合は、すぐに解決できてしまうのです。
もちろん、それで理解できました。よかったよかった。ハイ次。…次の日には絶対忘れています。
何より、講師がいない家では何も勉強ができなくなります。聞けば解決する楽さを覚えてしまえば、仕方ないといえば仕方ないのですけど…。
繁盛している個別指導塾の講師は、生徒への手のさしのべ方や説明のさじ加減が素晴らしく上手いのです。
自主性を奪わず、問答をしながらちょうどいい説明に留めています。場合によっては自分で教科書を開かせたり。
学習塾を開こうとするあなたはそれくらいの技量を持っているかもしれません。
しかし、雇った講師はどうか。その講師も新しく雇うたびにこちらが育てるのです。その研修体制を整えるのも…講師の研修は月謝もらえません。むしろこちらが時給を払うのです。う~む。
講師を使って生徒の成績をあげるというのは、結構ホネが折れるのです。
管理人りきち的まとめ。
ここまで言っておいてなんですが、新しく開業した個別指導塾へ入塾してくる子は結構います。
ぶっちゃけて言えば“なんとかしてくれる塾を探している”のです。
響きがいいですもんね。我が子を個別に見てもらえるって。
しかし収益を出すためには、講師を雇う必要があります。講師をマネジメントをする手間をあなたがどう考えるかです。生徒数が増えてくると、講師の育成や管理がメインの仕事になりかねません。
しかも大手の個別指導塾の授業料は、安い時給で働いてくれる講師がいる前提で設定されています。ブラック化が叫ばれる現在、それもいつまで持つかですが…仮に同じ時給なら講師側は大手になびくでしょう。
それに対抗できる授業料や時給を設定できるか。あまり授業料を高くしては通える家庭数が限られますし、授業料を安くしたり時給を高くすれば、あなたの実入りが減ります。
なぜ学習塾を開くかは人によって様々でしょう。しかし、私のように好きにやりたくて自分の塾をやるのであれば個別指導塾はおすすめしません。余計な手間が多すぎる。
ただ、家賃がかからない部屋があり、あなたが一人で個別指導塾を開くのであればいいと思います。初期限定でね。最初の生徒が集まりやすいですから。そこからテナントへ移るときに、指導形態を変えるなりなんなりとかもありかと。
なので、一時的なステップとしては良いかもしれません。ただ、大手のような後ろ盾がない個人が個別指導塾を運営し続けるとなると、かなりレベルが高いが要求される思います。