集団指導塾の開業シミュレーション。

集団指導塾とはなんぞや。

集団授業、一斉授業ともいいます。一言で言えば、学校の授業のようなイメージですね。というかそれが全てです。

前方に黒板と教壇があり、そちらを向いて生徒達の机が並ぶ教室。講師が黒板に説明を書きながら授業をしていくというスタイル。約20人くらいの生徒を一度に指導します。30人はきっついです。

こんな感じのレイアウトかな。

少し前までは、どこの塾もこの集団指導が一般的でした。そのため、保護者世代からすれば「いわゆる学習塾」というイメージの安心感はあります。

保護者の間では“個別指導塾は大学生のアルバイトが教えている”などの認識もあります。しかし、集団指導塾に対しては“カリキュラムがしっかりしていて、教え方が上手な人が授業をしている”と前向きな印象を持ってくれています。

りきち
20人の思春期達を一度にまとめるのは、アルバイトの大学生には荷が重いですわな。

 

現在でも、大手進学塾やベテランの個人塾はこの指導方法を続けている塾が多いです。それだけその塾の講師は力量があるということですね。

集団指導塾のメリットは?

一度に多くの生徒を指導できる

集団指導最大のメリットは、一度にたくさんの生徒(20人前後)を教えることが出来るという点です。

個別指導塾や家庭教師の講師一人が一度に教えるのは1~2人、そう考えると講師一人で20人ってすごいですね。

一人の講師で一度にたくさんの生徒を指導することができれば、何人も講師を雇う必要がないのです。集団指導塾であれば、自分一人でも十分事足ります。

講師を雇えば毎月お給料や交通費などの人件費を払わねばなりません。毎月の固定費がふくらみます。万一その講師が問題を起こしたとき、あなたに責任も生じます。人を雇うって、結構神経使うんです。一人のが気が楽よ。

人件費がかからない、すなわち生徒一人当たりの月謝も高額になりません。他の指導方法の塾よりもご家庭に優しくなりやすい。

ただし、月謝は安すぎるとアレですよ。絶対ダメ。お気をつけて。

競争が発生し、やる気が出る

並んでみんなが同じ方向を向き授業を受けるので、友達が勉強している姿が多く目に入ります。そのため、競争が発生しやすいのです。

自分がわからない問題を友達が挙手して正解したら、誰しも内心焦るでしょう。聞いているのは同じ授業なんですから。

「私はあの子より先にわかった!」

「あいつが!?負けてられるか!」

学習塾によっては、成績優秀者やテストの番付を張り出すところもあります。度を超すといかがなものかと思いますけど、競争ががんばるきっかけになる子にはいい刺激になるでしょう。

つまり、そういう活発な子達が通塾するようになります。おとなしめの子は少数派。良くも悪くも、口コミが発生しやすいかも。

他に比べ初期費用が安い

机と黒板があれば指導できるという点で、他の指導方法よりも初期投資が安く済むのも大きいです。

集団指導以外の場合は、指導する場所を複数作らなければならないため、パーテーション(正確にはパーティションらしい)必要になります。

一枚の大きさは畳と同じくらいなので、畳を立てて仕切っていくイメージ。

これ一枚1万円くらいします。教室全体分となると、数枚では焼け石に水。かといって、けちって安いパーテーション買って生徒の方に倒れても困ります。

しかぁし、集団指導塾の場合はこれいらないのです。一斉に授業をするなら、全体を見渡せないと意味ないですからね。あえて使うなら、物置スペースを囲うくらい?カオスな物置は生徒に見せてはいけない(戒め)。

学習塾を開業してから学ぶことの方が多いです。開業費用が安く、素早く学習塾を開けるのは非常に強いです。

集団指導塾のデメリットは?

魅力あふれる授業が重要、人材の確保が困難

多くの生徒を一度に教える、つまり生徒を引きつける話術や板書術が必須です。

学生時代を思い出してください。学校の授業、聞いているのしんどかったでしょ。私はしんどかった。学校で毎日5時間の授業、よく聞いてたなぁと思いますよ。

集団指導は、講師や授業によっぽどの魅力がないとあっという間に生徒達は離れていきます。

りきち
授業している側は楽しいんですよ。でも聞いている側は結構きついのです。

開塾するには、学校の教師としての経験や塾講師の経験が欲しいところ。

もし経験がなくても、どうせ最初は生徒少ないです(泣)。誰もこない曜日もあるでしょう。なので、その間に必死で練習すれば何とかなる…かどうかはあなた次第。

声の出し方、黒板の書き方、視線の動かし方、ノート取りの邪魔にならないような移動など、結構忙しいの。まぁ、はっきり言って場数踏めばいいんですけどね。

仮に他の人を雇って授業をしてもらうときも、それだけの人材が確保できるかどうか。要するに、プレゼン上手のかなり優秀な人材ですからね。自分で学習塾開けるレベルの人材。途中で抜けられても困りますから、雇うならいい給料をバンバンあげましょう。

学力差がある生徒への対応が難しい

大人数に勉強を教えるということは、教室にいる生徒達の学力の最大公約数をとって指導をすることになります。

りきち
要は、だいたい平均学力の子に合わせて授業をするということです。

なので、優秀な子にしてみればわかっている話を聞かなければならず、反対に成績が下位の子にしてみれば授業内容は全然わかりません。レベルか極端に違う生徒に対してどのように対応するかも課題です。

だから大手の学習塾は入塾テストを実施して、学力別のクラスにしているんですね。ですが、個人塾にはそこまでのスペースも人材もない。

しかし、開塾してすぐ来る生徒は成績がとんでもなくボロボロ伸びしろががっつりある子達にほぼ固定されるので、最初は心配ないです。

そのレベルの子達を飽きさせずに理解させる。はぐれメタル狩りのような、いいレベル上げになりますよ。(でもすぐ逃げる?)

大手との違いをどうアピールするか

大手の学習塾は、集団指導をしていることが多い。その場合、大手塾との差別化をどうしたもんでしょうか。

悲しいことに、あなたの塾が大手塾とあまり変わらないと判断されれば、生徒や保護者達はまず間違いなく大手塾を選びます。

おにぎりであれば、多くの人は個人店よりもセブンイレブンのおにぎりを買います。

カップ焼きそばであれば、よくわからないメーカーよりもペヤングか明星の一平ちゃんが食べたい。

ポテトチップであれば、とりあえずコイケヤかカルビーを私は買います。

そもそも、なかなか買ってすらもらえないのです。それだけ看板の差は大きい。
そして買ってもらったとしても、よほどの感動がなければリピートはないのです。

りきち
普段買わないお菓子を買ったとしても、大してちがいがなければ2度目は買わないですよね。
しかも学習塾の場合は食べて終わりではなく、保護者からすれば自分の子どもをしばらく預けることになるのです。

集団指導塾をつくるであれば、私の塾は大手塾とはここが違う、と自信を持っていえる絶対的な強みが必要です。

通塾時間が固定される

集団指導の場合は学習塾の側で時間割を決め、その時間に生徒達が来て授業を受けることになります。

これは生徒や保護者の側からすれば時間の融通が利かないことに他なりません。

このご時世、子ども達は何かしらの習い事をやっています。学習塾を考えるレベルのご家庭であれば尚更。

「この曜日に通いたいのに元々習っている習い事があって通えない」
「仕事の都合でこの時間帯の送り迎えが難しい」
「学年が上がって通塾曜日が変わったら困る」

そのため、大手塾では何パターンか通えるコースを用意していることが多いのです。

学習塾が授業できる時間帯は、学校が終わってからのみ(18時~22時くらい)。一学年に対して週2・3回授業をしなければならないことを考えると、個人塾では何パターンも用意はできません。

ぶっちゃけていえば“こちらが設定した曜日に通える子のみ入塾可”となるため、生徒募集するときに最初から絶対数が絞られることを意味します。それを跳ね返すだけの集客力を持てるかどうか。

りきち
絶対に成績をあげるので、何よりも私の授業を最優先にしてください。

これくらい言い切るとかっこいいですね。超クール。

集団指導塾でのシミュレーション。

このシミュレーションは、“もしこれから私が集団指導塾を作るとするならば”の仮定法です。簡単なイメージ付けにどうぞ。

今回最終的に目指すところは、

対象は公立小中学校の生徒(小学5年~中学3年)。

小学生は国語と算数、中学生は英語と数学のそれぞれ2科目をメイン。

売上で1300万くらい。家賃含む経費(300万前後)と税金(所得税や住民税、消費税、個人事業税、健康保険税など)を引く。小規模企業共済や確定拠出年金などの控除系もそこそこに活用。

結果、おおよそ手元に残るお金で600万くらいを目標。

土日は意地でも休む。

ではいきます。

まず、目標とする売上は1300万円。単純に12ヶ月で割れば、1ヶ月で約110万円売り上げることになります。

ただ、学校が長期休みの間は季節講習(夏期、冬期、春期講習)を実施すると思います。なので、1年間を通せば12ヶ月分の授業料よりも多めの授業料を得ることができます。

おおよそ夏期講習で1.5~2ヶ月分、冬期講習と春期講習で1.5~2ヶ月分プラスされます。もっと稼ぐところは稼ぐでしょうが、適度に稼げばこんなもんです。

なので今回1年を15ヶ月で考えると、1300万÷15ヶ月≒約85万円

とりあえず、1ヶ月に85万円売り上げるような授業料設定が必要。

ここで一度、レイアウトの話に戻ります。

りきち
今更ながら、観葉植物は絶対置きたいんだよなぁ。

机をこれだけ置くと、左半分の授業スペースだけで約10坪(33.058㎡)くらいの広さが必要になります。

靴箱とか面談机を入れれば、全部で15坪(約50㎡)。私の周辺では50㎡のテナントで家賃が10万円~くらいです。

りきち
しかし、こんな綺麗な長方形のテナントはほぼありません(笑)。もう少し広さに余裕があってもいいかも。

この席だと最大で18人の授業。ただ、平均すればいいところ15人でしょう。

まず中学生(中学1年、中学2年、中学3年)が、

15人×3学年=45人。

小学生(小5、小6)は中学生ほど塾へきません。なので、中学生の半分くらいとして、

7人×2学年=14人。

順調になったとして、約60人になります。早くても数年はかかると思いますが、いい感じですね。

りきち
ちなみに、開業後1年で10人生徒がいれば御の字ですよ。
月の売上85万円を60人で達成するには、
85万÷60人≒約15000円
生徒一人あたりの授業料が約15000円。これを元に授業料を設定します。
ここで文部科学省の調査を見てみましょう。
ちなみに1年間の費用です。12で割れば1ヶ月分。
小学5年生6年生で費用が跳ね上がっているのは、公立小学校から中学校受験を考えて中学受験専門の塾へ通い始める層もいるからでしょう。
この調査には学習塾へ通っていない(0円)の層も含まれています。その上での平均なので、学習塾に通っている層のみでの平均はこれよりも高くなると考えられます。
公立小学生向け学習塾の代表格、公文式と学研教室の授業料は、
公文式(1科目毎)…7,560円(東京、神奈川)、7,020円(その他の地域)
学研教室(週2回)…8,640円
以上を踏まえると、
今回の集団指導塾の小学生の授業料は
8,000円~(週2回授業)
くらいが妥当でしょうか。高くても10,000円でしょう。
月85万円の授業料のうち、
8000円×14人=112000円
が小学生の授業料となります。残り約74万円は中学生45人から。
74万÷45人=約16500円
中学生一人を約16500円の授業料にすれば目標に手が届きます。学年で差をつけるなら、
中学1年生…14,000円(週2回授業)
中学2年生…17,000円(週3回授業)
中学3年生…19,000円(週3回授業)
授業の時間割としては、

こんな感じでしょうか。

ちょいちょい授業がない時間帯が予備日になります。祝祭日や修学旅行の振替や、インフルエンザが流行ったとき用。

時間割に余裕がないと、土日に対応するしかなくなってしまいますからね。土日は意地でも休むぞ。

開業費用についてはまた別の記事で。

集団指導塾で開業したときのイメージはこんな感じです、競合する学習塾の月謝や、近所の子供の数など完全に無視していますけども(笑)。

管理人りきち的まとめ。

集団指導塾で開業するなら、最大の問題は大手塾との差別化です。

周りにあなたの学習塾の魅力が伝わり、生徒が集まって軌道に乗りさえすれば、自分一人で多くの生徒を抱えられるの集団指導塾はいい感じでしょう。

反対に他の塾に埋もれてしまうと、脱却するのも一苦労。

本音を言います。刮目どうぞ。

集団指導塾は、新しく学習塾が開けばどんどん生徒が入ってくるような数十年前までは有効な指導方法でした。

ただ、現在はインターネットを開けば無料で有名講師の授業動画を見ることができます。

もちろん、その動画を見て成績を上げられる子は少数でしょう。また、学習塾であれば生のライブ授業ならではの緊張感があることは間違いありません。

しかし、授業に対して生徒や保護者の目が肥えてきている。これは紛れもない事実です。

りきち
学校以外の授業も簡単に見ることができ、比較対象が多すぎるのです。

 

もちろん、自らの指導スキルに絶対の自信があるのであれば、ぜひ集団指導塾を開業しましょう。素晴らしい授業を多くの生徒達が受けることができますからね。

そうでなければ、新規開校する場合の指導法としてはまだ再考の余地があると思います。確かに集団指導の経験がなくても、生徒が少ない間に授業の練習ができます。しかし、それで競合塾にどこまで太刀打ちできるか…。

周りと似たり寄ったりな学習塾を開いても、そこに価値は認めてもらえません。大手と同じ集団指導塾の場合は特に、絶対的な強みが必要になることを肝に銘じておいてください。

おすすめの記事